山賊の極意

山賊の日常を綴ります

UNDERTALE考察と感想

f:id:No_thirty_three:20220728080944j:image

UNDERTALEに、ハマった。

 

 

※紛らわしい人物の呼称

ニンゲン…プレイヤーが操作する主人公

Chara…Gルートの最後に現れ、プレイヤーの付けた名を名乗る人物

 

 

 

 

考察:結末と"リセット"について

UNDERTALEは、ニンゲンが一人のキャラクターとしての自我を手に入れる物語である。

彼はプレイヤーの操作に従って経験を積み、その果てに自らが何者であったかを発見する。

Pルートでは、思いやりに満ちた平和主義者"フリスク"として自己を確立する。一方Gルートでは、世界を憎み力を追い求める"Chara"の人格が目覚める。

この意味で、Nルートは結末の一つとは言い難い。Nルートを終えた時点でのニンゲンは、名もタマシイも持たない人間のままだからだ。

このことは各ルート終了後のリセットのあり方にも関わっている。

Nルートにおける"リセット"は、あくまでニンゲンの持つ"とくしゅのうりょく"(=セーブの力)によるものだ。それゆえ、モンスター達はリセット前の記憶ゆえに既視感を覚える事があるし、同じ力を持つフラウィに至っては全てを記憶している。

つまり、Nルート後のリセットとは、ニンゲンがプレイヤーの操作によって能力を発動するというものである。

Pルートを終えると、リセットは"本当のリセット"へと名前を変える。この後の世界のモンスター達にデジャブは起こらない。またフラウィからは、本当のリセットをするなら「ボクの記憶ごと消してもらうことになる」と警告される。

このことから、Pルート後のリセットは、プレイヤーがメタ的な意味でゲームのセーブデータを消す行為に等しいと解釈できる。

Gルート後のリセットは、上位存在となったCharaによる世界の再創造である。

UNDERTALE世界への回帰を望むプレイヤーは、Charaに対してリセットを要求する。Charaは望みを叶える代償に、プレイヤーのタマシイを要求する。このリセットはCharaの力によるものであり、主導権はCharaの側にある。

 

 

Pルート感想:違和感の正体

さて、初めてPルートを完走した私には、満足感と共に一抹の違和感が残った。

これは一体どうしたことだろう。

言うまでもなく、Pルートという結末は文句の付けようもない大団円である。

ニンゲンは、誰一人殺すことなく地上への帰還を果たした。

モンスター達は、悲願であった地底からの脱出を実現した。

彼らは良き友人となり、新天地での生活を始める。

そんな幸福の輪の中に、

プレイヤーなど存在しない。

ニンゲンがフリスクという自我を手に入れた以上、プレイヤーの操作はもはや用済みなのだ。

さらに、再起動後に現れたフラウィは次のように言い放つ。

『ただ一つ残された脅威は、キミだ』

フリスクの幸せを奪わないで』

完全に敵扱いである。

フラウィの主張はもっともではある。一方でプレイヤーには、ニンゲンをNルートというハッピーエンドにまで導いたという自負がある。

自らの救った世界から切り離され、あまつさえ拒絶されるという事態は、文字通りの"違和感"を与えるものである。

世界に受け入れられないのであれば、世界を守る義理もない。

かくして私は、Gルートへと進む口実を手にしたのであった。

 

 

Gルート感想:世界への敵対

Gルートを歩むプレイヤーに対し、UNDERTALEは容赦をしない。

前回の紹介記事の中で私は、このゲームの長所として次のような特徴を挙げた。

・戦闘義務の少なさ

・エンカウント率の低さ

・初心者に配慮された難易度

これらは、Gルートに限っては全くの嘘である。

Gルートにおける戦闘回数は非常に多い。ランダムエンカウントの上限まで敵を殺すのだから当然である。その過程において、エンカウント率の低さは余計でしかない。

難易度に関してもN,Pルートとは一線を画す。アンダインやサンズとの戦闘が初心者に配慮されているとは思えない。サンズに至っては聖域であるはずのコマンド選択時にまで攻撃を仕掛けてくる。

これまで感じていたゲーム側の優しさやシステムの快適さに悉く裏切られる状況は、UNDERTALEという世界そのものを敵に回したかのように感じられた。

 

ところで、Gルートではフラウィの体験に関する独白を聴くことができる。

『初めはこの力をいい事に使ったよ。みんなと「ともだち」になって、みんなの悩みを完璧に解決してあげた』

『だけど何度も繰り返してる内に、先が読めるようになってきた』

『全ては好奇心から始めた事だった。こいつらを殺してみたらどうなるんだろう…ってね』

また、最後の決戦中で、サンズはニンゲンの心理に対する洞察を語る。

『良いか悪いかなんて関係ないんだよな?』

『「できる」ってだけでやろうとするんだ。そう…「できる」ってだけで….やらずには居られないんだ。』

これらは直接プレイヤーに向けられた言葉ではない。しかし、Pルートを経てGルートに進むプレイヤーの動機とも重なるものである。

RPGゲーマーの原動力がまさしく好奇心であることを、このゲームの作り手は良く理解し、そして信頼している。

Gルートの徹底した作り込みと、プレイヤーの好奇心を惹く押し引き。

この絶妙な力加減が、UNDERTALEの醍醐味だ。